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- [ 2022.12.15 ] 怪談☆ 【グラス越しの女】
- [ 2022.12.07 ] 怪談☆ 【魂を宿す人形】
- [ 2022.12.01 ] 怪談☆ 【チャクラが開く】
- [ 2022.11.25 ] 怪談☆ 【がんじゃさん】箱にすむもの
- [ 2022.11.16 ] 怪談☆ 【呪曲】刹那と永遠
怪談☆ 【グラス越しの女】
これは、今から2ヶ月前、竹中さんに恐怖体験の取材をしていた時のことです。
僕は待ち合わせた喫茶店で珈琲を飲みながら彼を待っていました。
ゆったりした曲が流れる店内。
どんな話が聞けるのか、嬉々とした思いで外を眺めていると、窓の横を男性が通りました。
彼は、店内に入ると僕の向かいに座りました。
お互いSNSで顔を知っていたので、初対面でしたが初めて会った気はしませんでした。
ただ、彼の表情に陰りのような暗さを感じました。
彼の珈琲を注文し、他愛のない会話。
やがて、彼の前に珈琲が届くと、彼は1口、口をつけ、淡々と自身の体験について語り始めました。
なんでも、半年程前、彼の結婚が決まったそうですが、その頃から突然、脳裏に
嘘つき、嘘つき、嘘つき・・・
と何度も何度も繰り返し聞こえるようになったんだとか。
仕事中も寝ている時も、所構わず聞こえてくる声。
その声が、かつて交際していた女性のものによく似ているんだそう。
その女性とは4年ほど前に別れているとのこと。
なんでも、竹中さん側の家庭の事情による婚約破棄だったそうで、別れ際は所謂ドロ沼。
そして、最後に言われた言葉が
嘘つき
でした。
僕はその話を聞きながら、通しの水を飲もうとコップを持ち上げました。
そして、気づいてしまいました。
コップ越しに見た竹中さんの隣り。
いつの間にか女性が座っています。
そして、彼の肩に両手を置き耳元で何かを話しているよう。
コップを置き、肉眼で彼の隣を見ると、そこには誰もいません。
もう一度、水を飲むふりをし、コップ越しに彼の隣を見ます。
やはり、彼の隣に女性が座っていました。
まだ残暑厳しい9月にも関わらず、地厚そうなニットを着込んだショートカットの女性。
この女性が声の主でしょうか？
彼の体験談を一通り聞き終え、僕は恐る恐る聞いてみました。
ひょっとして、今も嘘つきって聞こえてます？
頷く彼。
僕は目の前にいる女性の特徴を伝えてみました。
驚いた様子でこちらを見る彼。
どうやら、その女性の特徴が元交際相手の特徴とよく似ていたらしい。
僕は目の前で起きていることを伝えました。
彼の表情がみるみる驚きと恐怖が混ざったものになります。
彼は落ち着こうとしているのか、珈琲を飲もうとカップを持ち上げました。
手が小刻みに震えているのがわかります。
そして一気に飲みほすと、ゆっくり立ち上がり、軽く挨拶し去っていきました。
去っていく彼の背中がやけに暗く見えました。
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怪談☆ 【魂を宿す人形】
ある日曜日、ハナさん(仮)は娘のユミちゃん(仮)とリサイクルショップを訪れました。
ハナさんがあれこれ古着を見ている中、ユミちゃんは玩具コーナーで玩具を見ていたそう。
しばらくすると、ユミちゃんは1体の着せ替え人形を持ってきました。
どうやらその人形が気に入ったよう。
ハナさんはユミちゃんから人形を受けとったその瞬間、手にパチンと静電気のような痛みと胸の奥から込み上げてくるような気持ち悪さを感じました。
理由はさっぱり分かりません。
ただ、その人形は買ってはいけない。
触れてはいけないものなんだと、本能的に感じたそうで、ユミちゃんに違う人形にするよう勧めました。
どうしても、その人形を持ち帰りたくなかったそうです。
けれども、ユミちゃんは人形を諦めてはくれず、結局購入することになりました。
帰宅するとユミちゃんは早速人形で遊び始めました。
その様子を眺めながら言いようのない不安な気持ちでいっぱいのハナさん。
人形に触れた時の感触が、頭と手から離れません。
そんな事を知る由もないユミちゃんは無邪気に遊んでいます。
ユミちゃん、その日は人形を抱いたまま眠りました。
次の日、ユミちゃんは元気に保育園に向かいました。
ユミちゃんを保育園に送ったあと家事を始めたハナさん。
しばらくすると背筋にゾワゾワした寒気と誰かに見られているような気配を感じました。後ろを振り返ると、食卓の上、あの人形がちょこんと座っているのが目に入りました。
きっとユミちゃんが片付け忘れたんだろう。
人形を片付けようと手に取ると、刺すような冷たい視線に気づきました。
咄嗟に視線の先を見ると、部屋の隅、ちょうどユミちゃん位の歳の女の子がジーッとこちらを見ている姿が見えました。
それは、ほんの一瞬の出来事でした。
けれども、女の子から向けられた突き刺さるような冷たい視線が印象的で脳裏に焼き付いたんだそう。
身体が自然と震えだし、部屋の隅を見たまましばらくの間、固まっていました。
我に返ったあとも、家事をしていると時折、視線を感じていたんだそう。
不気味、不安、恐怖。
誰もいないはずの家に得体の知れない何かがいる。
その日は気が気ではなかったと言います。
夕方になり保育園から帰ってきたユミちゃん。
真っ先に人形で遊び始めました。
その人形で遊ぶことを注意したかったハナさんでしたが、止める理由が浮かびません。
不安に思いながらも、ユミちゃんが遊ぶ様子を見ているしかありませんでした。
次の日も、その次の日も何者かの視線を感じながら家事をこなしていたハナさん。
視線の主は見知らぬ女の子で、決まってハナさんが1人の時に現れるそう。
背中に刺すような視線を感じたり、視界の端を横切るんだとか。
実害は無かったものの、向けられる視線の冷たさに危険を感じていました。
金曜日、ユミちゃん、ジュースを零して人形を汚してしまいました。
ハナさんは人形の服を脱がせ洗おうとしたそう。
その時、あるものに気づきました。
人形の腕の付け根。
黒い糸のようなものが生えています。
よく見ると、足の付け根、腰周りにも同じようなものが見えます。
試しに引っ張ると途中で切れてしまいましたが30cm程の細い繊維が人形から出てきました。
それを引き抜いてハナさん、全身がゾワゾワと総毛立ち、首から上の血液が一気に引いていくのを感じました。
慌てながら、恐る恐る人形の胴体を外してみると中に何かがぎっしりと詰められています。
取り出そうとすると、突然初めて人形に触れた時に感じた気持ち悪さが再びハナさんを襲いだしました。
気持ちが悪い。
戻しそうになるのを堪えながら人形の中の物を引き抜きました。
そして、そのままペタンとその場に座り込んでしまったそう。
腰が抜けてしまったんだとか。
人形の中に詰まっていたもの、30〜40cm程の髪の毛の束と赤い糸、そして、黒ずんだ茶色の塊。
ハナさん、それが何かすぐに気づきました。
へその緒。
人形の中に誰かの髪の毛とへその緒が入れられていました。
そして、赤い糸。
誰が何のためにやったのかわかりません。
ただ、決して普通ではない、明らかに異常なものであるのは間違いない。
呪術的な何かかとも思ったそうですが、1秒たりとも手元に置いておきたくないと、すぐにゴミとして出してしまったんだとか。
その後、ユミちゃんには泣かれましたが、ハナさんはホッとしたといいます。
そして、幸いそれ以降、女の子は現れなくなり、視線も感じなくなったそう。
もしかすると、あの人形は誰かの亡くなった子供の代わりだったのかもしれません。
人形に詰まっていたものは有名な降霊術【ひとりかくれんぼ】の材料によく似ています。
人形の元の持ち主は人形に亡くなった子供の魂を宿そうとしていたのかもしれません。
ただ、何故そのような人形がリサイクルショップに並んでいたのか？
依然として謎が残ります。
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怪談☆ 【チャクラが開く】
カナエさん（仮）は半年程前からヨガを始めました。
ヨガのあとの身体の解れた感覚、頭の中、心の中がスッと研ぎ澄まされた感覚。
本や人から聞いて知った【チャクラが開く】という感覚が気持ちいい程に腑に落ちたそうで、
ヨガの魅力にどっぷり浸かってしまったそう。
毎朝、毎晩、欠かさず行っていました。
2ヶ月程経ち慣れてくると、より深く【チャクラが開く】感覚に浸りたいと思うようになったそうで、
ある曲を聴きながらヨガを行うことを思いつきました。
その曲はヒーリングミュージック。
なんでも、聴くとチャクラが開く曲なんだそう。
夜のうちにYouTubeで曲を選び、次の日の朝、早速実践。
伸びやかな曲に身を任せ、身体を解していきます。
なんだかいつもより解れているように感じる。
頭の中、心の中の澱んだものが抜けていく感覚。
朝の澄んだ空気も相まって、至極心地よかったそう。
その後、朝食と支度を済ませ出勤。
ガヤガヤとした満員電車。
普段と変わらない光景。
けれども、異変は始まっていました。
周りがやたらと五月蝿い。
話し声が四方八方から聞こえてきます。
小声ではなく、普段の会話の声量。
すし詰め状態も相まって酷くストレスを感じます。
さらに、聞こえてくる会話の内容もカナエさんを不快にさせました。
誰かへの悪口、卑猥な内容。
普段、表に出すことはないであろう過激な話が周りから聞こえてきます。
ただただ不快。
そんな中、聞き覚えのある声。
声の方に向き直ると3人向こうに後輩の姿が見えました。
後輩は吊革に捕まり、目を閉じています。
そこで、気づきました。
後輩の口元。
動いていないにも関わらず、声が聞こえてきます。
ふと隣を見ると…
隣もそう。
周りも皆同じ。
カナエさん、訳が分かりません。
電車に揺られながらアレコレ考え導いた答えは
【心の声が聞こえている】
ヒーリングミュージックとヨガでチャクラが開いた影響ではないかと考えたそう。
まさかと思いましたが、他に心当たりはありません。
そんな折り、さらに不快にさせる事が起きました。
後輩の声、カナエさんに対する不平不満が聞こえてきた。
辛辣な言葉が容赦なく投げつけられます。
聞きたくない。
けれど、それはお構い無しに聞こえてきます。
不快不快不快不快
ようやく駅につくと、その場から逃げるように電車を降りたんだとか。
カナエさん、いつもの通勤より遥かに疲れていました。
それ以来、ヨガを行うときはチャクラが開く曲は流さないようにしたんだそう。
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Category: 不思議系 | Tag: 怪談 謎 不思議 超常 呪い ホラー ヒーリングミュージック
12:37 | Comment(0) | Trackback(0) | PageTop↑
怪談☆ 【がんじゃさん】箱にすむもの
池田さん(仮)の家には代々【がんじゃさん】と呼ばれる小さな箱が伝わっていました。
一辺が15cm程の木でできた立方体。
蓋は南京錠で閉ざされています。
鍵は代々家長が受け継いでおり、箱に触れることも家長以外許されておりません。
池田さんの祖父の話では【がんじゃさん】は【願蛇様】ということらしく、箱の中には願いを叶える蛇が入っているそう。
祖父は毎日欠かさず【がんじゃさん】の中にお猪口1杯分程の米粒を入れており、これが【がんじゃさん】の餌なんだとか。
池田さん自身、中に本当に蛇が入っているなんてことはないと思っていますが、不思議なことに毎日箱に入れている米粒が溢れてくることは無かったといいます。
箱から米粒を取り出す様子も、これまで一度も見たことがないそうです。
この【がんじゃさん】、箱に願い事を書いた半紙とお猪口1杯分程の米粒を入れることでお願いできます。
このことは集落中が知っていたらしく、願い事をさせてほしいと、色んな方がお金の包みを持って祖父を訪ねて来ていたそう。
ただ、いい事ばかりではありません。
願い事が叶うと身体のどこかに蛇のような痣ができるんだとか。
願いが大きければ大きいほど痣は大きくなるそうです。
そして、願いは1人につき1回限り。
2回、3回と【がんじゃさん】で願いを叶えようとすると、不幸に見舞われます。
ある時、池田さんの家に血相を変え訪ねてきた方がいました。
近所の方で年齢40〜50程の男性。
なんでも、奥さんが事故にあったらしく、病院に搬送されたそう。
状態が悪く、予断を許さない状況で、【がんじゃさん】に救ってもらおうとのこと。
ただ、その方、既に過去に1度【がんじゃさん】を使っているらしく、肩に蛇のような痣がありました。
祖父は彼を仏間に通しました。
【がんじゃさん】は仏壇の横にある小さな祭壇に置かれています。
池田さんはお茶を運ぶと彼と祖父、そして父の話を横で聞いていたそう。
祖父はお茶に口をつけると、既に1度、願いを聞いてもらっているのでもう使えないこと。
もう1度使おうとすれば、不幸に見舞われることを丁寧に説明し始めました。
けれど、彼は凄い剣幕でまくし立てます。
それだけ、必死だったのでしょう。
頑なに拒んでいた祖父でしたが、決心したように立ち上がると半紙と筆を彼の前に起き、墨をすり始めました。
先程までの喧騒が嘘のように静まり返った部屋。
ズリズリという音だけが響きます。
やがて墨をすり終えると、彼にもう1度、【がんじゃさん】のことを説明しました。
彼はウンウンと頷きながら、願い事を半紙に書いていました。
やがて、書き終えると、半紙を祖父に渡しました。
祖父は【がんじゃさん】に一礼すると、箱を手に取り彼の前に置き、どこから取り出したのか鍵で南京錠を外しました。
すると、わずかに蓋が浮き、隙間から得体の知れない気配が漏れだしたそう。
祖父がもう1度、彼の方を向くと、彼はこくりと頷きました。
それを見た後、祖父は蓋をずらしてできた僅かな隙間に折り畳んだ半紙と米を入れ、また鍵を掛けました。
その様子はまるで箱にいるといわれる蛇を外に出さないようにするかの様でした。
【がんじゃさん】の効果かどうかはわかりませんが、彼の奥さんは無事に一命を取り留めたそう。
けれど、それから半年後。
彼の家が火事で消失。
中から彼と奥さんのものと思われる遺体がみつかったそうです。
火事の様子を見ていた人達が言うには日は這うように燃え広がったらしく、昇る火の手はまるでとぐろを巻く蛇のようだったそうです。
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怪談☆ 【呪曲】刹那と永遠
当時、中学2年生のカエデさん（仮）が蚤の市で2曲の楽譜と出会いました。
曲名は【ETERNAL】と【Moment】。
2曲一対で元々1つの曲を2つに分けたものなんだとか。
趣味でピアノを弾いていたカエデさん、この2曲の楽譜を購入しました。
帰宅し、早速弾いてみたそう。
元の曲は【Moment】から始まり【ETERNAL】に続くらしい。
【Moment】は早弾きの曲で指をピアノの端から端まで目まぐるしく行き来させます。
刹那を意味する曲らしく、激しく軽やかな子供時代を思い起こさせました。
一方【ETERNAL】は穏やかな曲調。
先程までの激しさはなく、雄大、優美。
軽やかな子供時代から打って変わって落ち着き払った壮年期を感じさせます。
弾き応えのある曲。
それから、家でも学校でも、連日その2曲を弾いていたそう。
ある日の昼休み、いつものようにピアノを弾いていると、友人がやってきました。
友人もピアノが趣味なんだそうで2人は一緒にピアノを弾き始めました。
友人が【Moment】を、続いて【ETERNAL】をカエデさんが弾きます。
軽快に曲を引き終えた友人は達成感に満ちた満足気な表情。
それを受け、カエデさんも、目を閉じ、曲に入り込むように一音一音奏でていきます。
音楽室に拡がる優美なメロディ。
数分後、【ETERNAL】を奏で終わると、1人で弾いていた時には感じたことのない達成感と高揚感、
生気が満ち満ちる感覚を覚えたそう。
何とも言えない愉悦。
この感覚を共有したい。
そう思い、友人の方を向いた時、異変に気づきました。
椅子に項垂れ、ガタガタ震えながら座る友人。
まるで生気が抜けたように血の気を感じさせない真っ青な顔。
慌てて保健室に連れて行きましたが、状態が悪くそのまま病院に運ばれました。
そして2日後、友人は旅立ったそう。
カエデさん、気になることがあるという。
【ETERNAL】の譜面には【シ】の音が組まれていませんでした。
一方、【Moment】は早弾きに紛れるようにふんだんに【シ】が盛り込まれています。
【シ】は【死】。
この2曲は呪いで、友人の死の原因ではないかと考えているそう。
【Moment】が生気を吸い【ETERNAL】が与える。
2曲を弾き終わる事で発動する呪い。
友人と奏でた時に感じた愉悦は、友人の生気を吸っていたからではないか？...と。
件の楽譜ですが、友人の死後、忽然と消え所在がわからないそうです。
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